パチンコ店の経営が成り立つ以上、トータルでは店の勝ち、客の負けとなることは目に見えています。一方で、客でありながらパチンコで生計を立てている人がいます。さらには、そういういわゆるパチプロがいるにも関わらず、やはり店は利益をあげることができます。確率まかせのはずなのにどういうことなのでしょうか。
もう、お判りと思いますが、店の経営が成り立つのは「確率が収束する」からです。もちろん不正を行う店もあるでしょう(そして不正を行うパチプロも)。しかしそれはごく一部です。「確率の収束」をきちんと理解して、稼働率を上げるなどの企業努力をしていれば、法を犯すリスクを負わなくとも経営は安定するし、同様にパチプロも生活できるのです。
(逆に言えば、稼働率を上げられない店が最終手段として遠隔操作などの不正に走るのでしょう)
収束のしくみの前に、もう少しパチンコについて説明しておきましょう。
ハナシを単純にするために、
としましょう。一ヶ月間ツいている人もいれば、フツーの状態の人もいるでしょう。しかし店はそういう全ての人のツキの平均が理論的な大当たり回数をある程度超えていても、充分収益が出るように釘を調整すれば良いわけです。
大当たり確率○○○分の1のパチンコは、その確率のくじ引きを延々と続けるゲームです。
くじを引くにはある決められた箇所に玉が入らなければなりません。10個打って1個入るのか、17個で1個なのか...それらをコントロールしているのが「釘」です。つまり釘はくじの単価を決めているようなモノです。
多少ツいていても釘が厳しければ(くじの単価が高いことになるので)なかなか勝てません。そうです。多少のツキなら店が勝つように釘は調整されているわけです。
一方で、あまりに釘を厳しくすると負ける人(あるいはその負け額)が増え客足が遠のいてしまうので、利益を確保しつつもある程度は甘くせざるを得ません。
つまり、まともな店なら釘の甘い台は存在し、そして甘い台を選んで(長期間継続して)打つことのできるパチプロもまた勝てるのです。
例:大当たり確率1/4、くじを引く回数4回
というくじ引きを考えてみましょう。この場合、当たる回数は0回〜4回までの5通りです。それぞれが起こる確率は、
大当たり回数 | 計算式 | 結果 | 式の意味 |
0 | (3/4)4 | 81/256 | 4回すべてハズレ |
1 | 4×(1/4)×(3/4)3 | 108/256 | 1回アタリで3回ハズレ。どのひとつがアタリかが4通りある |
2 | 6×(1/4)2×(3/4)2 | 54/256 | 2回アタリで2回ハズレ。どの2つがアタリかが6通りある |
3 | 4×(1/4)3×(3/4) | 12/256 | 3回アタリで1回ハズレ。どの3つがアタリかが4通りある |
4 | (1/4)4 | 1/256 | 4回すべてアタリ |
計 | 256/256 |
ここで示した計算式は大当たり回数をnとして一般形で書けば、
となります。アタリ(確率1/4)がn回、ハズレ(確率3/4)が4-n回、何回目にアタリがあるかなどの組合せが4Cn通り、なのでそれぞれをかけた形になっています。
ところで、表の「計」を見てもらえればわかるとおり、この確率の合計は「1」になります。起こりうる全ての確率の合計が「1」になることに疑問はないと思いますが、もう少し説明してみましょう。
これは(x+y)2を展開しただけですが、この式をバカ丁寧に書き換えると、
となります。そしてこの式の各項の一般形は、
です。
式Aと似ていますね。それもそのはず、式Aは、
を展開したときの各項の一般形であり、先の表は展開した各項を個別に計算し合計を求めたモノなのです。x+y=1/4+3/4=1ですから、その合計が「1」になるのは当たり前ですね。
この様に2つの項の和(x+y、あるいは1/4+3/4)の累乗を展開する事を「二項展開」といいます。
さて、先の表をグラフにしてみましょう。
このように起こりうるケース毎の確率(をグラフにしたもの)を「確率分布」といいます。今回の場合の様に、ある確率(ここでは1/4)で起こる事象(当たり)に対して、複数回の試行で何回起こるかを表したモノを特に「二項分布」と言います。
くじ引きの確率分布は二項分布になることがわかりました。ゴールまでもう少しです。例では試行回数4回でしたが、もっと増やしていくとグラフはどうなっていくでしょうか。
何だか確率分布らしくなってきましたね(笑) いびつだった形が試行回数を増やすことで左右対称で滑らかなグラフになってきました。「二項分布」は試行回数が充分多ければ「正規分布」に近似できることがわかっています。下に示したグラフは試行回数80回の場合を「正規分布」で近似したものです。二項分布を正規分布で近似することで、様々な統計的計算が可能になります。
やたら複雑な式が出てきましたが、覚える必要はありません。平均と標準偏差が判っていれば具体的な式で表すことができ、グラフにもできるということを知っていれば充分です。さらにこの式を必要な範囲で積分すれば、例えば「80回の試行で大当たりが18回から22回起こる確率」などを計算することができます。
上の図から、次のようなことが読みとれます。
確率1/4のくじ引きを80回(1回100円としてみましょう)行うと、
「確率が収束する」とは上の例で言えばこういうことです。
間違っても、「最初の40回で15回も当たりを引いたら次の40回では5回くらいしか当たらない」というような事ではありません。
また、当たりの確率さえ判っていれば、試行回数、確度、範囲(例で言えば80回、96%、1/2.9〜1/6.7)の3つの内2つを決めれば残る1つを計算できることになります。
例えば1/315のパチンコでは、
などが計算できるというわけです。
やっと本題です(笑) 上のAとBを計算してみましょう。
確率の分母(この場合315)をk、理論上の確率との誤差をr(この場合0.01)と書くと、求める回数nは、
何と1200万回転必要となります。一人でやるとなると20年近くかかる(T-T)
しかし200台あって稼働率60%もあれば1ヶ月で達成できます。理論上の確率との誤差1%以内ということは1/311.9〜1/318.2の範囲ですから、店としては平均して1/311.9で大当たりが出てしまっても利益が出るように釘を調整しておけば、月単位の収支がマイナスになる確率(危険率)は2.5%ということになります。10年間(120ヶ月)でたった三月です。こうして店の経営は安定するわけです。
(厳密には確率変動か否かのバラツキや打つ側の投資額のバラツキもあるため、店側の危険率はもう少し上がります。が、その分釘を調整すればいいだけです)
次にBを求めてみましょう。
まずは理論上の確率との誤差何%の範囲に収まるのかを計算します。Aと同様に確率の分母(この場合315)をk、試行回数(この場合4万回)をn、求める誤差をrとすると、
誤差が0.1453と求められたので、求める確率の範囲は、
これが4万回転のときの収束範囲です。4万回転というのはいわゆるパチプロの方なら1ヶ月で消化できる回転数です。これだけやれば悪くても1/368.6くらいは見込めるというわけです。平均1/368.6でも収支プラマイゼロになるような台を選んで打てば、月単位でマイナスになる確率が5%(確度90%なので危険率は10%の半分で5%)。5年間(60ヶ月)で三月です。
(これも店側の危険率同様、厳密にはもう少し上がります)
ここで回転数が1万回転だったとしましょう(熱心な週末パチンカークラス)。同様に計算すると、収束範囲は
1万回転程度ではこのように収束範囲が広すぎて、収支は安定しないでしょう。1万回転で4万回転と同じ様な収束範囲にするには確度を59%まで下げなければならず、その結果危険率は20.5%((100-59)/2)となり、パチプロのように台を選べたとしても5ヶ月に一度は収支マイナスになります。
(これも同様に危険率はもう少し上がります)
この「1万回転より4万回転させた方が収支が安定する」ということこそ「確率が収束する」ということなのです。
上の方でエクセルで簡単に計算できると書いたので、エクセルのデータをダウンロードできるようにしました。
ご自分でいろいろと数値を入れてみて下さい。上で計算した値と微妙に異なる結果が出ますが、それは有効桁数の取り方が違うだけですので大勢に影響ありません。
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