ボーダー理論に否定的な人は昔からたくさんいます。
否定される理由は様々ですが、ボーダー理論自体を否定するのは無理があります。
なぜボーダー理論で勝てるのか、は「第22回 ボーダー理論のビジュアル化」や「第21回 確率はホントに収束するのか」をご覧下さい。
例えば、行動範囲内のすべてのホールのすべての台が期待値マイナスであればボーダー理論は絵に書いた餅でしょう。
しかしボーダー理論が間違っているのではありません。
この地域には打てる台がない(打てる店がない)という結論が出るのもまたボーダー理論です。
打てる台がないときは打たないという立ち回りはボーダー理論を実践する上で重要です。
このような個々の否定説に答えるのは別の機会に譲り、今回は「逆正弦定理」によるボーダー理論の否定について解説してみます。
逆正弦定理を持ち出す人の主張はおおよそ次のようなものです。
微妙に違う主張の人もいるかと思いますが概ねこんな感じです。
では、まず「逆正弦定理」について説明しましょう。
期待値ゼロのゲームを繰り返したとき、ある程度回数を重ねれば、累積収支はプラスになったりマイナスになったりするよりも、プラスの人はずっとプラスでマイナスの人はずっとマイナスとなるケースが多い。
これが逆正弦定理(逆正弦法則)です。
平たく言えば、
ということになります。
下図で言えばAのように収支ゼロラインを何度も横切るケースは稀で、BやCのようなケースが多いということです。
プラス領域に滞在する割合を横軸にとり、確率密度を縦軸にとると、次のようなグラフになります。
このグラフから、累積収支がプラスである期間とマイナスである期間がほぼ同じ割合であるケース( x = 0.5:x軸の中心付近)が最も稀だ(確率密度が低い)とわかります。
同じことですが、9割がたマイナス領域にいるケース(x軸の左端付近)や9割がたプラス領域にいるというケース(x軸の右端付近)が最も起こりやすい(確率密度が高い)わけです。
ある程度の偏りが生じるとなかなか挽回できません。
偏ったからといって逆向きの力が働くわけではないからです。
逆正弦定理からわかるのはそういうことです。
そもそもボーダー理論は、結果にバラツキがあることは織り込み済みです。
一時的に負けていてもそのうちツキが平均的になって収支はプラスになる?
え?
と思う人もいるかもしれませんが、そうなんです。
長くやればツキが平均化されるのは間違いありません。
しかし、例えば「総当たり回数」などは理論値からの欠損がある程度大きくなれば、おいそれと挽回できず、欠損したままが続くでしょう。
未来のどこかで欠損の埋め合わせがもらえるわけではないのです。
ボーダー理論はそこに期待しているわけではありません。
ボーダー理論を実践するということは、プラスの期待値(仕事量)を積み上げるということです。
実際の累積収支は累積期待値の周囲に分布します。
累積期待値以上にプラスの人もいれば、どれだけやっても累積期待値に満たない人もいるでしょう。
ボーダー理論に逆正弦定理を適用するなら、累積収支がプラスかマイナスか、ではなく、累積収支が累積期待値を上回るか下回るか、で考えるべきです。
累積収支が累積期待値を下回り続けたからといって収支がマイナスとは限らないのです。
それがボーダー理論で勝てる理由です。
次の図でAのようなケースは稀で、ほとんどはBやCのようになります。
しかし、それはボーダー理論の否定にはなりません。
100人のシミュレーションを行った結果が次の図です。
誤解を怖れずに書くなら、