前回は普図抽選回数検証のための計算でしたが、せっかくなのでここまでの結果を使って期待出玉を計算してみます。今回も遊タイムは考慮していません。
(注)前回の結果「ストックタイム100回での普図抽選回数264.3回」ではRUSH突入率は61-62%程度にしかならないことが判明しました。なぜ64%にならないか詳細は第30回を参照ください。
差し当り冒頭に、シミュレーション結果を基にした普図抽選回数別の期待出玉を掲載しておきます。
ストックタイム100回での普図抽選回数 | 240回 | 264.3回 | 284回 |
RUSH突入率(シミュレーション結果) | 58.10% | 61.39% | 63.97% |
平均V-LOOP獲得数(シミュレーション結果) | 0.910 | 0.999 | 1.072 |
平均ラウンド数(初当たり3R含む) | 24.13 | 26.19 | 27.89 |
期待出玉(1R=140玉) | 3379 | 3667 | 3904 |
等価ボーダー | 23.65 | 21.80 | 20.47 |
アンコール10回転での引戻し回数 | 0.0185 | 0.0195 | 0.0203 |
アンコール考慮の期待出玉 | 3441 | 3738 | 3983 |
アンコール考慮の等価ボーダー | 23.23 | 21.38 | 20.06 |
(注)以降の記述は「ストックタイム100回での普図抽選回数264.3回」でRUSH突入率64%という前提で書かれています。
改めてスペックを掲載しておきます。
大当たり確率 | 1/319.7 | |
アタッカー賞球 | 10カウント15個(3R/ 10R) | |
普図確率 | 1/350 | |
RUSH突入率 | 64%(実射値) | |
振り分け(特図1) ※ヘソ及び右上黄色羽 | 3R ストックタイム100回 | 75% |
3R ストックタイム150回 | 25% | |
振り分け(特図2) ※右下赤色羽 | 3R RUSH終了 | 28% |
3R RUSH継続 | 22% | |
10R RUSH継続 | 72% | |
アンコールタイム | RUSH終了後 時短10回転 |
黄色い部分は公式サイトには見当たりません。
前回(第28回)のデータのほか各種計算を【表2】に示します。
核心となるRUSH獲得数(V-LOOP獲得個数)の計算だけ後述します。
また、各方面でV-LOOPを5個獲得できたとの報告があるようですが、ここでは最大4個までで計算しています。後で5個までの場合も考察します。
V-LOOP獲得か否かで【図1】のように分けても良いですが、V-LOOP獲得できなかった場合、その後の出玉は無いので【図2】のように考えて、この遷移が突入率64%のアンコールタイム(時短10回)で繰り返される、と考えた方がシンプルです。
繰り返される、と言っても初当たりの50回に1回くらいですが。
RUSH平均継続数 | \(\dfrac{1}{1-0.72}\) | 3.5714 |
RUSH平均ラウンド数 | \((10\times \dfrac{0.5}{0.5+0.22}+3\times \dfrac{0.22}{0.5+0.22})\times (3.5714-1)+3\) | 23.214 |
最後は必ず3Rで終わる。これを除いた2.5714回分は3Rと10Rの振り分けに依る。 | ||
平均RUSH獲得数 | 計算は後述 | 1.01592 |
初当たりを含む平均獲得ラウンド数 | \(3+23.214\times1.01592\) | 26.584 |
アンコールタイム引戻し率 | \(1-(1-\dfrac{1}{319.7})^{10}\) | 0.03084 |
アンコールタイム平均引戻し回数 | \(\dfrac{0.03084}{1-0.03084}\) | 0.03182 |
アンコールタイム突入率 | = RUSH突入率 | 0.64 |
1R出玉 | \(10\times(15-1)\) | 140 |
アンコールタイムを考慮しない期待出玉 | \(26.584\times140\) | 3721.7 |
アンコールタイムによる平均セット数 | \(1+0.64\times0.03182\) | 1.02037 |
アンコールタイムを考慮した期待出玉 | \(3721.7\times1.02037\) | 3797.6 |
第28回では普図抽選の回数に注意と書きましたが、スペックどおりの出玉かどうか、右打ち中の玉の増減なども考慮して期待出玉は調整してください。
ちなみにこのとおりの出玉であれば等価ボーダーは21.05rpk。なかなか厳しいですね。
この講座で期待値を計算する際に度々登場する表をここでも書いておきましょう。
普図抽選確率(1/350)を\(r\)、普図抽選回数(前回の計算では357.07回)を\(N\)と書きます。
\(x\) | 0 | 1 | 2 |
\(p(x)\) | \({}_N \mathrm{C}_0\times r^0(1-r)^{N}\) | \({}_N \mathrm{C}_1\times r(1-r)^{N-1}\) | \({}_N \mathrm{C}_2\times r^2(1-r)^{N-2}\) |
\(x\) | 3 | 4 | 5 |
\(p(x)\) | \({}_N \mathrm{C}_3\times r^3(1-r)^{N-3}\) | \({}_N \mathrm{C}_4\times r^4(1-r)^{N-4}\) | \({}_N \mathrm{C}_5\times r^5(1-r)^{N-5}\) |
この確率は二項分布と呼ばれ、次のような二つの項の展開式(二項展開)の形をしています。
\[
(a+b)^n={}_n \mathrm{C}_0\times a^0b^{n}+{}_n \mathrm{C}_1\times a^1b^{n-1}+{}_n \mathrm{C}_2\times a^2b^{n-2}+\cdots+{}_n \mathrm{C}_n\times a^nb^{0}\\
\]
今回は \(a\) が \(r\) で、\(b\) が \(1-r\) ですから
\[
(r+(1-r))^N=1\\
\]
で、 \(N\) がいくつであってもすべての項を合計すれば1になります。
しかし、V-LOOPは4個(あるいは5個)までしかストックできないので、その分だけ計算します。
この各項の意味としては、例えば \(x=2\) の場合は
\(N\) 回の普図抽選で2回当選(\(r^2\) )してそれ以外は外れ(\((1-r)^{N-2}\))、\(N\) 回中のどの2回が当たりだったかの組み合わせが\({}_N \mathrm{C}_2\) 通りあるのでそれらを掛けた形になっています。
【表2】に具体的な数値を入れたものを【表3】に示します。
\({}_N \mathrm{C}_3\) などの計算はエクセルでもできますのでここでは結果だけ書きます。
\(x\) | 0 | 1 | 2 |
\(p(x)\) | \(1\times 1\times (\frac{349}{350})^{357.07}\) \(\fallingdotseq0.36\) |
\(357\times (\frac{1}{350})^{1}\times (\frac{349}{350})^{356.07}\) \(\fallingdotseq0.36825\) |
\(63546\times (\frac{1}{350})^{2}\times (\frac{349}{350})^{355.07}\) \(\fallingdotseq0.18782\) |
\(x\) | 3 | 4 | 5 |
\(p(x)\) | \(7519610\times \) (\(\frac{1}{350})^{3}\times (\frac{349}{350})^{354.07}\) \(\fallingdotseq0.063683\) |
\(665485485\times \) (\(\frac{1}{350})^{4}\times (\frac{349}{350})^{353.07}\) \(\fallingdotseq0.016149\) |
\(46983275241\times \) (\(\frac{1}{350})^{5}\times (\frac{349}{350})^{352.07}\) \(\fallingdotseq0.0032668\) |
さて、V-LOOPの平均獲得数とは、この表の \(x\) の期待値ですから、各獲得個数にそれが起こる確率を掛けて合計すればOKです。
しかし、【表3】では6個以上の確率が含まれていないため、確率を全て合計しても「1」になりません。
最大獲得数を超える確率分は最大獲得数に組み込まなければなりません。
その補正を考慮したV-LOOPの最大獲得数が4個の場合と5個の場合の平均獲得数を【表4】に示します。
最大4個の場合 |
\(0\times 0.36 + 1\times0.36825 + 2\times0.18782 + 3\times0.063683 + 4\times\color{orange}{0.020246}\fallingdotseq1.01592\) |
最大5個の場合 |
\(0\times 0.36 + 1\times0.36825 + 2\times0.18782 + 3\times0.063683 + 4\times0.016149\\+ 5\times\color{orange}{0.004097}\fallingdotseq1.02002\) |
これが【表2】で後述すると書いた平均RUSH獲得数です。
この計算では獲得ゼロのケースも含めていますが、【図1】のように場合分けするなら、
最低1つ獲得したという前提なので獲得1個から4個までの確率を0.64で割って計算し、
\(1\times0.57539 + 2\times0.29347 + 3\times0.09950 + 4\times0.03163\fallingdotseq1.58738\)
とすればOKです。
最大5個なら
\(1\times0.57539 + 2\times0.58693 + 3\times0.29851 + 4\times0.10093 + 5\times0.02552\fallingdotseq1.59378\)
がRUSH突入した場合のV-LOOP平均個数です。
【表2】の期待出玉を見ると3,797玉です。先述したとおり、等価ボーダーは21.05rpk。
しかもストックタイム中はわずかながら減るはずなので、オーバー入賞がそこそこ見込めなければ期待出玉はもっと少なくなります。
V-LOOP最大5個で計算しても3,811玉で、期待出玉としては20玉ほどしか変わりません。
さらに右上をマイナス調整されたら・・・なんか怖くて打てないなぁ。
近いうちに簡易シミュレータを作って検証してみたいと考えています。
→やりました。第30回に検証内容を掲載しています。