ボーダー理論の解説の続きは諦めていません、が期待値計算のリクエストをいただいたのでやってみました。
Pフィーバー革命機ヴァルヴレイヴ2のライトミドル(カミツキver.)です。
スペックを見て天井の威力がでかそうだなぁという印象。そして甘いのではと感じていたのですがまったく逆でした。
思ったよりだいぶ辛く出たのでシミュレータを作ってチェックしました。
スペックなどの理解不足があれば計算もシミュも同じミスを含んでいるかもしれません。もし間違いを見つけたらコメントいただけると大変嬉しいです。
天井を考慮する場合についてコメントいただきました。ありがとうございます。
それを踏まえてボーダーについて訂正し加筆修正しました。
結果を先に書いておきます。
平均総ラウンド数(注1) | 23.54 ラウンド |
期待出玉(注2) | 2118.80 玉 |
(注1)結果をシミュレータで確認していますが、この数値は計算値
(注2)右打ち中の増減なし、アタッカーこぼれ・オーバー入賞なしの出玉
SANKYO公式ページなど様々なスペック紹介サイトをみると2Rの払い出しが140玉となっています(3Rは300、10Rは1,000)。
また、パチ7チャンネル せせりくんの動画で2R時のアタッカーの挙動が見られたこともあり、2Rは1.4ラウンドで計算しています(動画内で説明は無いが2R当りの2ラウンド目は4カウントほどに見える)。
パチ7チャンネル ヴヴヴ2 199ver. 試打動画(該当箇所は24分50秒頃)。
天井を考慮せずにそのまま等価ボーダーを計算すると23.57rpkとなります。
ずいぶん辛いですが天井到達時は上位ラッシュ直行で、その期待出玉は次の表のとおりです。
平均総ラウンド数 | 69.95ラウンド |
期待出玉 | 6295.47玉 |
0回転からは辛いとはいえ、天井性能が良いとなるとホールの扱いは厳しくなりそうです。
天井狙いでなく通常の立ち回りの場合、天井到達率は
\[
(1-\dfrac{1}{199.8})^{500} = 0.0814\\
\]
で、それを考慮した平均期待出玉は
\[
(1-0.0814)\times 2118.80 + 0.0814\times 6295.47 = 2458.64玉\\
\]
で、この場合の等価ボーダーは20.32rpkです。
で、この場合の等価ボーダーは18.66rpkです。
天井頼みの感が否めませんが、スペックが辛いとまでは言えないですね。
天井を考慮した場合の「初当り時平均回転数」は \[ 199.8\times (1-0.0814)=\textcolor{orange}{183.54}\\ \] なので、2458.64玉なら等価ボーダーは \[ \dfrac{183.54}{2458.64}\times250=\textcolor{orange}{18.66}\\ \] となります。
天井を考慮した場合の「初当り時平均回転数」の算出方法についてはこちら。
大当たり確率 | 1/199.8 | |
時短中確率 | 1/16.1 | |
時短回数 | 初当たり時 | 4+4回 or 499+4回 |
右打ち時 | 17+4回 or 499+4回 | |
アタッカー賞球 | 10カウント10個(2R/3R/10R) ただし2Rは払出140個 | |
振り分け(ヘソ特図1) | 3R 宿命の刻(時短4+4回) | 80.5% |
3R カミツキRush(時短499+4回) | 19% | |
10R 超神憑きRush(時短499+4回) | 0.5% | |
振り分け(右特図2) カミツキRush | 2R カミツキRush(時短17+4回) | 13% |
3R カミツキRush(時短17+4回) | 27% | |
10R カミツキRush(時短17+4回) | 50% | |
2R 超神憑きRush(時短499+4回) | 10% | |
振り分け(右特図2) 超神憑きRush | 3R カミツキRush(時短17+4回) | 15% |
2R 超神憑きRush(時短499+4回) | 23% | |
3R 超神憑きRush(時短499+4回) | 12% | |
10R 超神憑きRush(時短499+4回) | 50% |
下位Rush(カミツキ)と上位Rush(超神憑き)を行ったり来たりする場合があるので複雑そうですが、めぞん一刻5とそれほど変わらないです。 めぞん一刻5の遷移図、期待値などはこちら。
もっとシンプルな遷移図が書けるかもしれません。
2つ目の「カミツキ当り(B')」とオレンジの「超神(C)」はその先が示されていませんが、それぞれ1つ目の状態と同じです。つまり遷移のすべてがこの中に含まれています。
まずは図中の A、A'、B、B'、C それぞれの状態になったときのそれ以降の期待獲得ラウンド数を計算します。
最後に初当たり時の振り分けに従って合算すれば、初当たり1回の期待獲得ラウンド数が求まります。
時短4+4回突破率 | \(1-(1-\dfrac{1}{16.1})^{8}\) | 0.4013 |
時短17+4回突破率 | \(1-(1-\dfrac{1}{16.1})^{21}\) | 0.7399 |
時短499+4回突破率 | \(1-(1-\dfrac{1}{16.1})^{503}\) | 1.0000(注) |
カミツキ平均ラウンド | \(2R\times(0.13 + 0.1) + 3R\times0.27 + 10R\times0.5 \) | 6.270R |
(2Rを1.4R計算) | \(1.4R\times(0.13 + 0.1) + 3R\times0.27 + 10R\times0.5 \) | 6.132R |
超神憑き平均ラウンド | \(2R\times(0.23) + 3R\times(0.12 + 0.15) + 10R\times0.5 \) | 6.270R |
(2Rを1.4R計算) | \(1.4R\times(0.23) + 3R\times(0.12 + 0.15) + 10R\times0.5 \) | 6.132R |
1R出玉 | \(10\times(10-1)\) | 90玉 |
(注)厳密には100%ではありませんが以降の計算では100%としています。ちなみにExcelでは0.999999999999990で9が14個続きます。千兆回に1回スルーする確率です。
「初当たり時期待総ラウンド数 \(E_R\)」を計算します。
上述したとおり、図中の A、A'、B、B'、C それぞれの状態になったときのそれ以降の期待獲得ラウンド数を計算します。
それぞれの「状態」の内容を確認しておきましょう(図中の言葉で書いています)。
A 時短4+4回 →(終了 or カミツキ当り)
A' 時短499+4回 →(カミツキ当り)
B' カミツキ当り →(2R/3R/10R→カミツキ or 2R→超神)
B カミツキ=時短17+4回→(終了 or カミツキ当り)
C 超神=時短499+4回 →(3R→カミツキ or 2R/3R/10R→超神)
Aが起きた時の「以降の」平均獲得ラウンド数を\( A\)と書くことにします。
\[
\begin{align}
A =& 0.4013\times B' + (1-0.4013) \times 0\\
\end{align}
\]
前半は4+4回時短の突破率0.4013と突破した時(=状態B')の平均獲得ラウンド数\( B'\)をかけています。
後半の(1-0.4013)は突破できなかった時ですが獲得ラウンドがありませんのでゼロをかけています。
そのような計算を表にまとめると次のようになります。
起こる確率 | ラウンド数 | |||
A | 0.4013 | \( B'\) | \(0.4013 \times B'\) | |
1-0.4013 | 0 | |||
A' | 1.0 | \( B'\) | \( B'\) | |
B' | 0.13 | \(1.4R + B\) | \(=6.132R \) \(+ 0.9 \times B\) \( + 0.1 \times C \) | \(=6.132R \\+ 0.9 \times B \) \(+ 0.1 \times (40.88R + B) \) \(=10.22R + B\) |
0.27 | \(3R + B\) | |||
0.5 | \(10R + B\) | |||
0.1 | \(1.4R + C\) | |||
B | 0.7399 | \( B'\) | \(0.7399 \times B'\) | |
1-0.7399 | 0 | |||
C | 0.15 | \(3R + B\) | \(=6.132R \) \(+ 0.15 \times B \) \(+ 0.85 \times C \) | \(=\dfrac{6.132}{0.15}R + B \) \(=40.88R + B\) |
0.23 | \(1.4R + C\) | |||
0.12 | \(3R + C\) | |||
0.5 | \(10R + C\) |
Cの最後の式の導出は次のようにします。
途中までで、
\[
\begin{align}
C =& 6.132R + 0.15 \times B + 0.85 \times C \\
\end{align}
\]
となっています。
\(0.85 \times C\)を左辺に移項して
\[
\begin{align}
(1-0.85)\times C =& 6.132R + 0.15 \times B \\
C =& \dfrac{6.132}{0.15}R + B \\\\
C =& 40.88R + B \\\\
\end{align}
\]
B'の最後の式はCの結果を使っています。
\[
\begin{align}
B'=& 6.132R + 0.9 \times B + 0.1 \times C \\
=& 6.132R + 0.9 \times B + 0.1 \times (40.88R + B ) \\
=& 10.22R + B
\end{align}
\]
さらに
\[
B = 0.7399\times B'\\
\]
ですから
\[
B' = 10.22R + 0.7399\times B' \\
\]
\(0.7399 \times B'\)を左辺に移項して整理すれば
\[
\begin{align}
(1-0.7399) \times B' =& 10.22R \\
\textcolor{orange}{B'} = & \textcolor{orange}{39.29R}
\end{align}
\]
よって
\[
\begin{align}
\textcolor{orange}{B} = & 0.7399\times B'&= \textcolor{orange}{29.07R}\\
\textcolor{orange}{C} = & 40.88R + B&= \textcolor{orange}{69.95R}\\
\textcolor{orange}{A} = & 0.4013\times B'&= \textcolor{orange}{15.77R}\\
\textcolor{orange}{A'} = & B'&= \textcolor{orange}{39.29R}
\end{align}
\]
これでそれぞれの「状態」以降の期待獲得ラウンド数が求まりました。
この結果のCは「超神憑きRush」突入以降の平均獲得ラウンド数ですから、これがそのまま天井到達時の期待ラウンド数となります。
初当たり時は80.5%で3R+A、19%で3R+A'、0.5%で10R+Cの振り分けです。
よって初当たり時期待総ラウンド数 \(E_R\) は
\[
\begin{align}
\textcolor{orange}{E_R}=& 0.805 \times( 3R + A)+ 0.19 \times( 3R + A')+ 0.005 \times( 10R + C) \\
=& 0.805 \times 18.77R+ 0.19 \times 42.29R + 0.005 \times 79.95R \\
=& \textcolor{orange}{23.54R}\\
\end{align}
\]
で、冒頭の表のとおり、1ラウンド90玉とすれば期待出玉は 2,118玉、等価ボーダーは23.57rpkとなります。
あまり見慣れない計算方法と思われる方もいるかもしれません。
参考までに普通のST機の「ST突入」以降の期待ラウンド数の計算を、よく知られている方法と今回の方法とで比較してみました。ちゃんと同じ結果になります。
\(\dfrac{1}{1-r}\)は突入時を含む継続回数なので1を引くことを忘れずに。
シミュレーション結果は次のとおり。
初当たりの約半数が270玉、68%が1,500玉、70%が2,000玉以下。辛いですね。